スウェーデンから冬の俳句をお届け Vinter Haiku Dikter från Sverige
12月も下旬に差し掛かり、連日指先がじんじんするような寒さの関西です。年末特有の忙しなさとともに、年の締めくくりのしっぽり感、新しい一年に向かう高揚感などが、日に日に街に満ちてきたように感じます。
スウェーデンでは、こちらよりももっと、寒くて暗い冬を迎えている頃でしょう。
前回の秋の俳句に続き、冬のスウェーデンから、ロルフ・オルソンさんの俳句が届きました。しんしんと、森の木に、庭に、街に降り積もる雪。長い夜に灯るあかり。クリスマス(Jul)を待ちわびる気持ち。日本の師走とはまた違った、冬のスウェーデンにあふれる空気を感じていただけたらと思います。
Snön faller tungt målar landskapet vitt. Vintern har landat しんしんと降る雪が 景色を白に塗ってゆく 冬の到来 Bitande kyla älgen står fastfrusen. Skidspår i skogen じんじん凍てつく寒さ ヘラジカが凍りついたように立っている 森のスキー道 Under vintergatan färdas ett renspann. Barnen väntar otåligt 冬の通りを トナカイの引くそりがゆく 待ちきれない子どもたち Äter pepparkakor värmer mig med glögg. Kommer tomten snart ジンジャークッキーを食べ グルッグを飲みあたたまる もうすぐサンタがやってくる
俳句の中に描かれたスウェーデン
ロルフさんの俳句の中には、スウェーデンらしい冬の情景がたくさん描かれています。
二句目の俳句には「スキー道(Skidspår)」という言葉が出てきますが、ここでいうスキーとは、「クロスカントリースキー」のこと。スウェーデンでは、冬になり雪が積もると、森の中をお散歩するようにスキーをします。ゲレンデに行ってスポーツやレジャーとして楽しむスキーももちろんありますが、こちらはもっと日常のもので、「冬の森のお散歩」という感覚が近いように思います。私がスウェーデン留学をしていた冬にも、いつの間にできたのか、近所の森には2本のスキー板で引かれた道がのびていました。このスキー道に沿って、子どもからお年寄りまで、地域の人たちがスキーを楽しんでいるようでした。
四句目に出てくる「グルッグ(Glögg)」とは、冬(特にクリスマスの時期)に飲むスウェーデンのホットワイン。スパイスの効いた甘い赤ワインで、カップには、アーモンドとレーズンがごろっと沈んでいます。ロルフさんが詠んでいるように、とても体が温まる冬の定番ドリンクです。グルッグにジンジャークッキーをちょんと浸して食べたり、人それぞれの味わい方もあるようです。飲み干した後に、ワインの風味の染みこんだアーモンドとレーズンをスプーンですくって食べるのも、美味しいです。
このほかにも、トナカイやヘラジカといった北国の動物が登場していたりと、スウェーデンらしさのぎゅっと詰まった今回の四句。「スウェーデン文化に興味のある日本の方が楽しめるように」と、ロルフさんが選んでくださいました。暗くて寒いからこそ、キャンドルの柔らかい灯のようなあたたかさや、雪の森をゆくように静かな楽しみに満ちた冬のスウェーデン。そんな空気をロルフさんの俳句から感じとっていただけたら嬉しいです。
words by:Hitomi